平成23年7月にda Vinciサージカルシステムを千葉県で初めて導入していただきました。ロボット支援手術は医師がイスに座って遠隔操作で内視鏡手術を行うもので術者は3次元10倍以上の拡大視野で手ぶれなく手術操作が開腹手術のように自由に行えます。開腹手術より疼痛が少なく、出血も少ないため輸血の危険性が減り、尿失禁の回復も開腹手術より早期です。このため早期の社会復帰が可能となっています。私は、1例目から担当させていただき、平成28年11月退職まで術者として170例、指導者として250例の患者さんの治療にあたりました。また、プロクター(技術指導者)として院外、院内の医師の指導にあたりました。
この間、以下の医療機関のロボット支援手術指導にも伺いました。山形大学附属病院、横浜市立大学附属病院、近畿大学附属病院、埼玉県立がんセンター、国保旭総合病院、横浜労災病院、公立陶生病院、茨城県立中央病院、日立総合病院、上尾総合病院など。
前立腺癌におけるロボット支援手術
前立腺癌は前立腺特異抗原(PSA)検査により早期癌の発見が多くなっている一方、骨転移やリンパ節転移を有する進行癌が今なお一定の割合で診断されています。新規治療薬としてGnRH アンタゴニスト治療剤(ゴナックス®)が平成24年に、新規ホルモン剤(イクスタンジ®、ザイティガ®)や抗がん剤(ジェブタナ®)が平成26年に治療薬として承認されました。私は、在職中、前立腺癌の多くの治験の責任者をさせていただきました。
腎臓癌は腹部超音波検査や、他の病気で検査中に偶然発見される場合が増えてきています。進行すると肺、リンパ節、骨などに転移します。これまで転移・進行癌にはインターフェロン治療のみでしたが、ネクサバールから分子標的治療薬の開発が進んできました。また、最近悪性黒色腫や肺癌などで免疫チェックポイント阻害療法の治療薬(オプジーボ®)が保険適応になりましたが、腎癌治療でもその治療効果が期待されています。私は、在職中、分子標的治療薬や(オプジーボ®)など腎臓癌の多くの治験の責任者をさせていただきました。
患者さんの増加に伴い外来診療の効率化を図るため県内の泌尿器科開業医師と泌尿器がんのクリティカルパス(以下パス)の作成を行い、地域連携を推進することを目指しました。平成19年11月より運用を開始しましたが現在では千葉県内70余りの病院や診療所と4000名の患者さんの医療連携をおこなうまでになりました。連携医の経過観察が容易となるように前立腺特異抗原(PSA)を用いた前立腺生検後のPSA経過観察パス、前立腺全摘後の経過観察パス、内分泌療法のパスの3種類を開発しましたが、現在では放射線治療後のパスも含めて運用を行なっています。私はこれまで再紹介する立場でしたが、今後は紹介する立場になりました。